「国内シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査」を、2017年9月6日・7日にスキルシェアサービスの「ココナラ」が実施した結果をまとめました。
今回、プレスリリースした記者会見に参加させて頂きました!
記者会見に参加するなんて生まれてはじめてなので緊張したー。
国内のシェアエコに関する調査データで大規模なものはまだまだ少なく、2017年現在、シェア事業者の人や、シェアエコに関心がある人にとって非常に貴重なデータになっています。
シェアリングエコノミー専門ブログとして、調査データを一番深く考察していきます。
データ詳細はココナラ公開資料「シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査」に930名への調査結果がまとまっています。以下、データ結果をココナラが要約した内容です。
シェアサービス調査結果の要約
シェアサービスの使用理由と満足度
- 「リーズナブルな価格」「不要なモノを持ちたくない」といった理由から、口コミや広告によって利用が広がっている。
- 利用者の29%は月1回以上利用。特に地方の主婦は52%が月1回以上利用。
- シェアサービスの満足度は84%で高い。男性で若いほど満足度が高い。利用者の44%は既存サービスよりサービスの質が高いと考えている。
懸念事項
- 一方で、利用者は個人間トラブルや個人情報漏洩などに対して不安を抱えながら利用しており、特に主婦や地方在住者ほど不安が大きい。
- シェアサービスを本業で使いたい人は利用者の47%に到達するが、トラブルへの懸念以上に社内制度で許可されていないことを理由に利用が進まない。
収入額とシェアする種類
- シェアサービスを提供するとしたら、利用者の45%が月に5万以上、21%が月10万円以上の収入を期待している。また、年齢が上がるにつれて収入を求めない比率が高まる。
- 提供したいシェアサービスはモノが1位だが、男性は移動手段、スキル、女性は家事、スキルが続く。また首都圏ではスキルが高い傾向にある
引用元:株式会社ココナラ公開資料:シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査
↓以下、記者会見時のココナラ南社長の話や自分の考察も踏まえた上で記述します↓
シェアサービス利用実態の調査結果に対する考察
シェアサービス利用で不安な点・課題点の第1位は「個人間トラブルが起こらないか不安」。これは、過去の調査データと同様の傾向です。
対策として、シェアリングエコノミー認証マーク制度などで、業界としてサービスの安全基準のレベルを上げたりしていくことは依然として最重要です。
改善して欲しいポイントは、「トラブル発生時の保証や迅速な対応」。
特に主婦や地方の人が望んでおり、シェアエコの女性や地方普及においては安全・安心なところをクリアするのが最優先という事が分かります。
シェアサービス利用の「本業」での利用意向について。利用者の47%は利用意向あるけど、「社内制度で許されていない」「トラブルへの懸念」などの理由で本業で利用できないとのこと。
クオリティを一定品質に保ちにくい個人間シェアを社内利用として導入させるのは難しいようです。
私自身も、会社員時代、社内でのスキルシェア活用の企画を2014年と2017年に計2回ほど上司に提案しましたが、見事にNGでした。シェアサービスの魅力云々以前に「そもそも個人に発注するのがありえない」という従来の慣習を破るのに、まだまだ相当なハードルの高さを感じます。
↓続いて、シェアサービスの中でも「スキルシェア」に絞った調査結果です。
スキルシェアサービス全体への調査結果
スキルシェアの認知度と提供スキルの種類
- スキルシェアは、認知は若い、働いている人の方が高いが、認知している方における利用率では、高齢や主婦の方が高い。
- スキルシェアも全体の傾向と同様に、地方の主婦が最も利用頻度が高く、利用者の56%が月1回以上利用する。
- 提供したいスキルは、男性は旅行、ITスキル、家具組み立て、資料作成、デザイン、女性は買い物、託児・育児、子育て、料理、掃除に興味。
収益とスキルの提供理由
- スキルシェアの提供者について男性の5割以上は5万円以上の月収を獲得。女性は、9割の主婦が5万円未満の月収であることから、女性全体でも約7割が5万円未満となっている。
- スキルシェアを提供する理由は、男性は自由に使えるお金を稼ぎたいが、女性は時間と場所にとらわれない働き方をしたいが多い。
スキル提供する場合、どのテーマで提供したいですか(複数回答可)
引用元:株式会社ココナラ公開資料:シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査
スキルシェア利用実態の調査結果に対する考察
スキルシェアサービスを認知している人の中で、利用率の高さは45歳-59歳のような高齢者、次に20歳-24歳のような若者が多くて使用者の年齢が二極化。働き盛りの世代(30~40歳前後)が一番スキルシェアを利用していないようです。
また、女性ステータスの中では労働者、ワーママ、専業主婦の中では専業主婦が一番スキルシェアを活用しています。
若者、高齢者、主婦などで潜在的にスキルを持っていても、社会に提供できる機会が少なかった人達が、スキルシェア市場のメイン利用者です。
私自身、スキルシェアでの発注経験は80回ほどありますが、元々企業で正社員として働いていた優秀な地方主婦や、優秀な大学の学生に非常に満足度の高い仕事をして頂いた実体験があります。従来であれば、スキルを活かす場所のなかった人達のニーズにスキルシェアのサービスが応えられている状況です。
スキルシェアへの希望月収は、主婦の場合、1-5万円希望の低めが多い。月数万円でもプラスであれば嬉しいと考えるようです。 低収入でもOKなのは、普段の生活費は旦那の稼ぎで賄えていること、もしくは、主婦が社会と接点が持てることそのものに喜びがあるからだと思います。
また、「収入は求めていない」比率は、高年齢になるほど高くなる傾向。若者は切実に収入は欲しいけれど、高齢者は収入より「やりがい」の方を重視している可能性があります。
私の当初イメージとデータによる実態との5つの違い
①シェアエコ利用者の約半分は既存サービスよりシェアサービスの質が高いと考えているという意外
シェアサービス全体と既存の法人サービスを比べれば、平均的なサービスの質が高いのはもちろん法人サービス。しかし、あくまで「平均値」の比較という視点が抜けており、シェアサービスの方が質が高い状況もあるという認識がデータを見るまで弱かったです。
シェアサービスには、既存の法人サービスにはない、レビュー評価の仕組みがあります。レビュー評価の高いサービスを積極的に選ぶことで、平均的な法人サービスの質を超えることは珍しいことではありません。
私の実体験として、Airbnbでレビュー100件以上で評価の高いスーパーホストの家に泊まった時は、本当に居心地が良く過ごすことができました。同程度の値段のホテルに泊まっても、同じくらいの満足度を得ることは難しかったはずです。
②利用者の中でも、地方の主婦の約半分が月1回以上も利用していること
シェアサービスは都会で流行っており、地方の人はまだ知らないという先入観が強かったのですが、リピーターという意味では地方の主婦の方が上です。
あらゆるサービスの恩恵がある都会と比べて、地方は他に選択肢が少ない事と、シェアサービスの利用に割ける「時間」が多いことが利用頻度が高い要因です。
「初回利用のハードルは地方の方が高い」けど、「一度使ったらリピーターになる割合が多いのも地方」という意味では地方へのシェアエコ普及の可能性を感じさせてくれます。
③シェアサービスを「本業」で使いたい人は利用者の約半分もいること
約半分の人が「本業」でも使いたいと思っているのは意外でした。
確かに、シェアサービス利用者に絞れば、その「ビジネスとしての威力」を実体験として分かっているのでしょう。
しかし、会社で決裁権を持っている層がシェアサービス利用のメイン層とは異なる為、使用するメリットがイメージできず、実際の導入は困難です。
ただし、利用者の半分が本業(会社組織)でも利用したいと判断している以上、本業での利用解禁の流れができるのも「時間」の問題です。
私自身、実際にフットワークの軽いベンチャー企業からスキルシェアの分野で発注頂く機会も増えています。スキルシェアの圧倒的な価格メリットと契約スピードの早さを活かせないと、今の時代勝てなくなってくることに実際の利用者は気づきつつあるようです。
④提供したいスキルの男性No.1が「旅行」。女性No.1が「買い物」、No.2が「託児・育児」という事。
スキルシェアの中で「旅行」や「買い物」カテゴリはほとんど市場規模がありません。「旅行」や「買い物」のスキルは提供したい人は多いけれど、提供されたい人がまだ少ないという意味で、需要と供給のバランスは取れていないようです。
次に、「料理や掃除などの家事代行」より、「託児・育児」のスキルを活かしたい女性のニーズが多いのが意外でした。
世の中では家事代行の方が市場規模が圧倒的に大きいので、そちらのニーズの方が大きいと考えていました。
個人間の子育てシェア(サービス例:アズママ)は双方の信頼関係を事前に築く必要があるので、利用のハードルは高いのですが、マッチングできた場合の満足度は家事代行より高くなりそうです。
上記、2つの切り口から、皆がやりたい事と実際の市場ニーズがマッチしていない部分もあると気づくことができました。スキルシェア事業者は、「旅行」「買い物」「子育て」の分野を今以上に伸ばすことで、社会に与えられる価値をより高かめることができます。
⑤「収入は求めていない」比率は、高年齢になるほど高くなる傾向
この事にデータを知るまで認識できていませんでした。
無縁社会になりつつある昨今。社会と繋がれる機会が減ってくる高齢層こそ、社会的な「つながり」を求めているとも言えます。また、企業の歯車として働く時間が長かったからこそ、シェアサービスで「得意を活かせる事」そのものへの喜びが大きいのかもしれません。
一方で、若い層は、まだ学生時代のつながりなども多く、基本給が少ないのでリアルな収入を求める傾向にあるようです。
意識調査への考察まとめ
シェアリングエコノミーは安心、安全面での不安を抱えながらも、社会への普及が加速していく要素がたくさんあることが分かる調査結果でした。
・「シェアサービスは口コミメインで伸びている」
・「一度使うとリピーターになる(特に地方の主婦)」
・「利用者の約半分は既存サービスより質が高いと考えている」
・「利用者の約半分は本業でも利用したい」など。
特に、今回のアンケート調査を実施したココナラは、テクノロジー企業成長率ランキング1位に先日選ばれたばかり。過去3年間で売上高が約13倍に増えており、国内産業の中でもシェアリングエコノミーの成長スピードは目を見張るものがあります。
今回の調査データを踏まえた上で、日本のあるべきシェア経済の姿について深い議論が活発化していくことに期待です。